MITで毎年1月はIAP(Independent Activity Period)と呼ばれる。この間各学部が独自の公開講義を提供し、出身学部関係なく誰もが様々な授業をとることができる。IAPには500を超える講義があり、バイオ、コンピューター、脳研究などのAcademicな授業もあれば料理、タロット、銃の撃ち方、スピーチ、音楽などのnon Academicな授業もある。このIAPは30年を超える歴史があり、単位認定される授業もあれば、単位認定されない授業もある。どれを取るか選ぶだけでも大変だが、僕は下記の授業を取ることに決めた。
・ ArtSMATS(Non-Credit):Sloan教授のKellyが主催。芸術あふれるボストンの地の利を活かし、Boston美術館、ボストン交響楽団(2002年まで小澤征爾が音楽監督を29年にわたり務めていた)を鑑賞し、またバレーや演劇についても教わるというもの。
・ Sports Management (単位認定)
・ High-Tech Start Ups and VC(Listener)
・ Charismatic Speaker(Non-Credit)
・ The State of the World Economy(Non-Credit, ノーベル経済学賞をとったMIT教授のSolow氏、新進気鋭のBlanchard氏が世界経済の今後について話すもの)
・ The Nuts and Bolts of Business Plans(単位認定)
・ Starting and Building a Successful Technology-Based Company(単位認定)
それにしても期間は1ヶ月間なのに欲張ったものだ。今週、先週とHigh-tech Start Ups and VC、The Nuts and Bolts of Business Plansに参加している。面白い。アメリカベンチャー精神のダイナミズムを肌で感じることが出来る。
High-tech Start Ups and VCは、自ら起業家で現在はVangurdという全米No.4のVCのパートナーを務めているJack Gill氏が、自らの経験を生徒にシェアし、また彼の人脈で様々な起業家を連れてきてスピーチをしてもらうというもの。2時間の授業のうち前半1時間は講義形式、後半1時間はスピーカー自らが経験を述べる。アメリカのハイテク都市、シリコンバレー、ボストンのダイナミズムを感じることができる。驚くのはスケールの大きさ。あるニッチ分野の世界最先端技術を商品化し、会社を軌道に乗せ、それを大企業に数十億、時には数百、数千億で売却した起業家の話は枚挙に暇がない。更に20代にして既に4社作り、そのうち2社を大企業に売却したという28歳の起業家(ロシアからの移民でMIT学部卒)もスピーカーとして講演してくれた。何から何まで驚かされる。VCやAngelがそのサポート役を担っており、彼らは資金提供と共に上場までの経営指導も行っている。ハイテクを生み出す土壌(優れた大学、秀才を天才に育て上げる環境)、それをビジネス化する体制(VC)が上手くかみ合ってアメリカのダイナミズムを生み出していると感じる。
翻って日本はどうか。優れたVCは多くあるものの、依然起業家の資金調達は一般的に言って限られているのではないか。銀行から金を借り、個人保証を入れている起業家も多いと聞く。もちろん一部のハイテク企業はVCから声が掛かり、またマザーズ上場などで順調に成長を遂げているかもしれないが、それは一部ではないか(データも無く素人の感想レベルで申し訳なし)。将来起業したいと思っても失敗したら一家離散といったダウンサイドのリスクがいまだに高い日本の起業環境はいつになったらアメリカのようになるのか。VCがもっともっと充実し、個人の企業家精神をサポートし、個人や大学に眠ったハイテク技術を掘り出し、ビジネス化する成功例をもっともっと作って欲しいものである。そういう意味でVCは意義の大きなビジネスであると思うし、もっと知りたい業界である。